Piano Nightly
矢野顕子 1995年 ランキングへ
ピアノと歌の、諧調の美。
決して恣意的なものに流れることのない――そのピアノの音色に、彼女の強い自制を感じます。丁寧に、より深い愛情を注ぐように、触れるように――例えば剣の達人が、互いの呼吸を読みあうように――意識的な引きから、一瞬で「間」をつめてくる閃き。一度聴いたことのある曲も、その楽曲が持つフォルムの美しさに、改めてはっと気づかされることでしょう。
弾き語りという形式がこんなにも豊かな表現を取りうるという事、のみならず、カバーアルバムという制約(コンセプト)が、彼女の本質――その研ぎ澄まされ、精錬された美意識を、より鮮やかに、よりまめやかに、より浮き彫りにして見せています。控えめながら、異様な切れ味の光る一枚。
本作ではハイパーあっこちゃん※が顔を出す事も(私基準では)ほとんど無いので、あれがどうも苦手、という人や初めての方にも超お勧めです。
※なんか行き過ぎていて手がつけられない状態の矢野顕子さんのこと。
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