déraciné
グレイプバイン 2005年 ランキングへ
衝撃的傑作!!今世紀初の国内ロック名盤!!・・などとは呼ばれなかった、
決して派手に騒がれることも無い滋味豊かな傑作。
近年は雑誌媒体等でも特別大袈裟に扱われることも無く、デビュー~2ndアルバムの頃しかご存知
ない方や特に興味をお持ちでない方にとっては、声にクセのあるなんとなくまだ居る手堅い中堅~そろそろベテランバンド、位のイメージ(ですかね・・多分)かも知れませんが、グレイプバインはただ続けているわけではないのだと思い知らされる、キャリアを積んだからこその魅力が詰まった紛れもない
名盤です。
それではどこがどう名盤なのか1曲ずつ簡単に紹介をしつつ説明したいと思います。
まず1曲目。・・・普通です。はっきり言ってしまって特に名曲!といった感じの曲ではありません。重めのサウンドにちょっと不穏で不敵な詞、狼煙上げ。初めて聴いた時は「まあいつものグレイプバインだよなあ」位の感想でした。
#2先行シングル曲。私は彼らのオリジナルアルバムは全て所有していますが、特に熱心なファンという訳ではなくシングルは未聴でした。おー、唐突な始まり。この曲は速いです。キャリア最速のBPMではないでしょうか。言葉のスピード感も演奏速度に置いて行かれる事なくタイトル通りその先へ行ってしまう程の冴えを見せてくれます。そしてギターソロ。今時カッコいいギターソロなんてなかなかないものですが、この曲でのフリーキーなカッコ良さは掛け値なしです。
#3はミドルテンポのバラード曲。彼等には「スロウ」「光について」近年では次作『From a small town』収録の「指先」等々シングルリリースされた良質なミドルテンポのバラード曲が多数有り、それらを「所謂グレイプバインのミドルテンポのバラード曲(そのまんまですね)」と呼びますが、本作にはその「所謂~」が収録されていません。そしてこの曲ですが、ミドルテンポのバラードでも上記のシングル
曲群「所謂~」とは構造が異なります。「所謂~」はシングル曲の宿命?でしょうかAメロ→Bメロ→サビのパターンでじりじりと効果を上げながらじっくり聴かせてくれるのですが、この曲はAメロ→サビ→
Aメロ→サビ→ブリッジ→サビ。簡単に言って率直、早い。引き、があるんです。どっしり構えるより
スピード感を汲んで聞かせてくれます。かといって物足りなさは全く無く、緊張感のある曲で前曲に
引き続き冴え渡っています。この#2~3の流れは絶品です。
#4は不穏な空気と緊張感を漂わせながらミニマルに淡々と進んで行き、最後きっちり盛り上げて
終ります。これもまた冴えています。
#5で前曲までの緊張感は緩ませながらも良曲。あんまり緊張感のあるものが続くと疲れます。丁度良いところで丁度良い以上の曲です。やっぱり冴えてます。私は初聴時ここで「もしや名盤・・?」と思いました。
そして名曲#6。開放感に溢れていてキラキラしています。ギターリフ主体の曲ですが、この曲も含め本作は全編に渡ってギターの音選びのセンスと切り込んでくる角度が抜群に冴え渡っています。歌詞も非常に素晴らしく、難解な詞作の多い田中氏にしてはかなり解り易く(と、いっても聴き取り易くはないのですが)とにかくグッと来る曲です。ところで余計なお世話ですが①先にも書きました通りリフ主体の曲ですので正直初聴時はいまいちピンと来ない曲かも知れません。大体においてこのバンドは
パッと聴きでは良さが解り難い所があると思いますので、聴く機会はあってもピンと来ないという場合、可能であれば数回聴いてみて下さい。そのうちピンと来るかもしれません。②この曲は後にシングルカットされ、ワンアイディア低予算撮りのどうにもトホホ・・なPVも存在しますが、このPVから入ってしまうとなんかイマイチ感がくっついて来てしまう恐れアリ。最初はPVを観ずにアルバムの流れで聴くことをオススメします。
#7、不穏なグルーヴ叩きつけ曲。名曲の後はアルバム中1番の取っ付き難い曲でした。
#8は#3は同様「所謂~」ではないタイプのミドルテンポのバラード曲。
#9でぶちかまし。
#10で最後、軽快に前向きに終わってくれる。
収録曲それぞれがそれぞれの役割をきちんと果たしている印象です。
メンバー全員が作曲できるのも強みですね。バリエーションに富んでいます。
「所謂~」が入っていないのも本作の場合功を奏し、アルバムとしてのテンポ、1曲1曲の立ちが非常に良いです。私は1曲目と7曲目が最初とっつき難い印象でしたが、それでも回数を聞くとしっかり良さがあります。
風通しが良いのに聴き応えがあり、聴き込む程の良さには耐久性もあります。
良いとも悪いともなんとも言えないジャケットもまあこれはこれで良いような気もしてきます。
歌詞カード内の楽器を抱えたメンバーの写真はかなりスッキリしたストイックな佇まいです。この感じは充実した内容に直結します。
万人受けするヴォーカルではなく、決して派手な存在でもない。
新規ファンの獲得も有るのか無いのか・・まあ余計なお世話ですがそんなことは置いておいて、
(特に近年の)グレイプバインは貫禄とフレッシュさが同居している、間違いなく国内最高峰の稀有なバンドです。
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